沖縄本島中部、読谷村(よみたんそん)にある「金月(きんちち)そば」は、沖縄そばの人気店として長らくその名を轟かせています。
その人気の理由は、麺、スープ、すべてにおいて妥協を許さないストイックなまでの姿勢。
数ある沖縄そば店の中でも、突出した個性を放つ名店の魅力に迫ります。
1.国産小麦と沖縄産小麦を使ったもっちり自家製麺
読谷村の58号線沿いに「金月そば」が誕生したのは約13年前。
当時の一般的な沖縄そば店では、あらかじめ製造所などで、ゆでて油をまぶして冷ました「ゆで麺」が使われていました。
しかし、生麺特有のつるりとした食感や、もっちりとした歯ごたえ、小麦の豊かな香りに魅せられた店主が、自ら生麺の開発に着手。
つまり金月そばは、「生麺沖縄そば」のパイオニア的存在なのです。
創業当初こそ外部の製麺所にオリジナルの麺を作ってもらっていましたが、ほどなくして全て自分たちの手で作ることに。
国産小麦と沖縄産の希少な小麦をブレンドし、3種類もの自家製生麺を作っています。
さらに小麦の製粉も、自分たちで行っているというから驚きです。
こちらの麺は、金月そばで最も多く使われている「凹凹(ぼこぼこ)太麺」。
「凹」の文字通り、中央部分がへこんだような形をしている理由は、スープによく絡むため。
沖縄産小麦ブラン入りなので風味もよく、もちもちとした食感も楽しめます。
凹凹太麺よりも若干細い「ストレート麺」は、心地よい噛み応えが特徴です。
メニューによって麺を使い分けており、ストレート麺は「担々そば」や「ゆし豆腐そば」などに使われています。
この2つ以外に100%沖縄産小麦を使った「地粉太麺」もありますが、現在は停止中。
お店に行った際に再開されていたらラッキー!ぜひ試してみてくださいね。
ゆで麺を使う沖縄そばの場合、オーダーしてからほんの数分で完成しますが、こちらは生麺のため少々時間かかかります。
「さっと出て、さっと食べる」というファストフード感覚の沖縄そばではありませんが、それこそ、金月そばがおいしい理由なのです。
2.7種類の魚節から作られた透き通るような出汁
もちろんスープにもこだわります。
凹凹麺が使われるメニューのスープには、かつお、さば、煮干し、とびうおなど7種類もの魚節の出汁から作り上げられた、その名も「手作り天然黄金出汁」を使用。
担々そばなどのスープには、さらに豚骨出汁などを加えパンチを効かせます。
このようにそばによって出汁を使い分け、最高に相性のよい一品に仕立て上げています。
具材にも独自の美学が貫かれています。
数あるメニューのなかでも「金月そば」と「沖縄そば」には、地元読谷のお豆腐屋さんの厚揚げがトッピング。
一般的な具材であるかまぼこなどは使わず、できる限り地産地消にこだわるのも金月そばならでは。
「金月そば」には、とろとろに煮こまれたソーキを別皿で。
まずは麺とスープの味を確かめて、お好みでトッピングしてもよし、そのまま食べてもよし。
好みで食べ方を変化できのもうれしいですね。
麺、スープ、具材の全てが考え抜かれ、この上なく相性の良い沖縄そばが完成します。
生麺はスープをどんどん吸って伸びてしまうので、出てきたら早めにいただくのがおすすめ。
ただし凹凹太麺が使われているメニューについては、料金そのままでスープを多めに注文できるので、慌てて食べきらなくても大丈夫です!
そばを食べつつ棚の上を見てみると、何やら素敵な器が並んでいました。
店主の趣味で集められたこれらの器は、地元読谷を中心に作られた「やちむん」と呼ばれる沖縄伝統の焼き物。
おしゃれでありながら温もりのある やちむんは、沖縄そばをさらにおいしく見せてくれます。
3.変わり種の沖縄そばもおすすめ!
シンプルなそばもいいけれど、変わり種もぜひ!見た目にも美しい「坦々そば」は、「金月そば」と並ぶ人気メニューです。
コシが強いストレート麺が、沖縄そばとも中華そばとも違う、新しい麺の形を教えてくれます。
金月そばは、こちらの読谷と恩納村、那覇の国際通りに3つのお店を構えています。
それぞれで少しずつメニューが異なるのでぜひ全店舗制覇して、食べ比べを楽しんではいかがですか?
text:仲濱 淳
Photo:白木 裕紀子
(取材:2020年9月)
住所: 沖縄県中頭郡読谷村喜名201
電話番号: 098-958-5896
営業時間: 11:00~16:00 ※売り切れ次第終了
定休日: 月曜日
駐車場: なし(近くに無料公共駐車場あり)
店舗詳細URL: https://kintiti.ti-da.net/