沖縄旅行中、一度は食べたい地元グルメが沖縄そば。多くの専門店がしのぎを削る中、昔からその変わらぬスタンダードなおいしさで人気を集め、特に国際通り界隈で働く地元の人からも絶大に支持される店があります。それが「ソーキそば専門店 田舎」。おいしい上に安くて早い!庶民の味方のような、沖縄そば店です。
1.那覇のディープな商店街(まちぐぁー)で長く愛される人気店

「ソーキそば専門店 田舎」のある場所は、那覇の国際通りから徒歩5分ほどの路地。牧志公設市場(建替え・仮店舗営業中)を中心とする巨大な商店街、沖縄の言葉で言うところの「まちぐぁー」のど真ん中です。昔ながらのアーケード街は昼間でも薄暗く、レトロ感たっぷり。近年ではその立地や独特の雰囲気を生かした大衆的な居酒屋が続々オープンし、「せんべろ」のメッカにもなりました。

新しいお店が増え、まちぐぁーの様子が変化する中、「ソーキそば専門店 田舎」は昔と変わらない佇まい。黄色の看板と、その上になぜか鎮座する大きなゴリラのぬいぐるみが、ひときわ目を引きます。

店内は意外にも広く、カウンター席、テーブル席、座敷席を備え、家族でも来られそうです。子ども用椅子もあるのがうれしいですね。


ずらりと掲げられた黄色いお品書きが、外観と同様に歴史を感じさせます。しかし何よりも驚くのが、その値段の安さ。ソーキそばが並盛で430円とは、数ある沖縄そば店でも相当お安いのではないでしょうか?このご時世、なぜその値段で大丈夫なのでしょう?店主の新城さんに伺いました。
2.徹底的なコストカットにより安くておいしいそばを提供

新城さんが、「ソーキそば専門店 田舎」をオープンさせたのは、およそ20年前。新城さん自身は、沖縄が本土に復帰する前からのキャリアを持つベテラン料理人です。
新城さんがお店を始めたのは、牧志公設市場周辺で忙しく働く人々に、安くておいしい沖縄そばを提供したいと考えたから。だからこそ、調理などを出来る限り自分で行い、徹底的なコストダウンを図っていると言います。実は少し前に、ご時世がら仕方なく数十円値上げに踏み切らざるを得なかったとのこと。それでも依然十分安く、お客さんには抵抗なく受け入れられました。

新城さんに、そばを作る上で心がけていることを伺うと…
新城さん:
「何か目新しい調理法や素材を使うことなく、昔から食べられてきた沖縄そばを、実直に作っているだけだよ。こだわりすぎないのが、安くてうまいそばの秘訣かもしれないね」
とのこと。味付けは感覚でやっていると言いますが、そばを茹で、丼に盛り付ける手さばきは素早く、熟練の技を感じさせるには十分です。今でも自ら率先して朝早くから店を訪れ、ソーキを煮込み、スープを作り、ていねいな仕込みを欠かしません。
そばには、「沖縄で一番おいしい」と新城さんが太鼓判を押す老舗のそばメーカー「亀浜そば」の細麺を使用。コシが強く、時間がたってもあまり伸びないのが特徴です。そのためテイクアウトでも美味しくいただけるとか。そしてスープは、カツオ節や豚骨がベースのしっかりとした味。

並盛なのに、このソーキの量!毎朝5時頃から3時間、軟骨ソーキを圧力鍋を使ってしっかりと炊き、骨まで食べられるよう軟らかく仕上げています。トロットロのソーキは誰もが好きな甘辛味で、間違いのないおいしさ。もちろんそばとの相性も申し分ありません。

注文してから5分とたたないうちに完成。これも、市場で働く人たちのために「早く」提供したいという思いから。どこまでもお客さんのために作られた沖縄そばは、まさに市場のファストフードです。
取材中、とっくにランチタイムを過ぎているにもかかわらず、ひっきりなしにお客さんが訪れていました。店で食べる人もテイクアウトする人も多く、この街の人々の暮らしに深く根付いてる店だということがよくわかります。安くて、早くて、その上おいしいとあれば、人気店になるのもうなずけますね。

「体が元気なら、あと10年は店を続けたいな」と笑う新城さん。近々店のそばに沖縄天ぷらの店をオープンさせる計画もあるとか。まだまだ意欲的な新城さん、ぜひ末永くお店を続けていただきたいですね。
text:仲濱 淳
Photo:白木 裕紀子
(取材:2020年2月)
住所: 那覇市松尾2-10-20
電話番号: 090-9786-0501 ※オーナー新城さんの個人携帯のため、夜間や早朝の電話はお控えください。出られない場合も多いです。
営業時間: 10:00~18:30
定休日: 無休
駐車場: なし

