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きしもと食堂(本店)

沖縄美ら海水族館のある本部町(もとぶちょう)が、沖縄そばの町として知られているのをご存知でしょうか?

「本部そば街道」と呼ばれる、県道84号線沿いに20軒以上の沖縄そば屋が軒を連ねています。

中でも「きしもと食堂」は一二を争う人気店。沖縄県民が愛してやまない老舗の味をぜひご賞味あれ。

目次

1.明治38年創業の歴史と変わらない想い

きしもと食堂(本店)|本店外観

地元住民の台所「もとぶ町営市場」から歩いてすぐのところにある「きしもと食堂」。

味わいのある外観からも歴史の深さを感じさせます。

地元で知らない人はいないほどの有名店で、お昼時ともなれば行列は必至。

多いときには1日に400人ものお客さんが訪れます。

明治38年、「きしもと食堂」は、創業者の岸本オミトさんが、当時賑わっていた渡久地(とぐち)港を行き交う人々を相手に、自宅の一角で沖縄そばを提供したのがはじまりです。

オミトおばぁが始めた店は、その娘から娘へと受け継がれ、現在は三代目の静子さんの長男・弘樹さんが四代目を継いでいます。

きしもと食堂(本店)|創業者の岸本オミトさん

戦前、沖縄そばの麺づくりでは「かん水」ではなく、ガジュマルなどを燃やした際に出た木灰(もっかい)を水に浸した上澄みを、つなぎとして使用していました。

そんな木灰(もっかい)そば作りに欠かせない薪が積み上げられた店を背景に立つのは二代目のカナさん。

弘樹さんの祖母で、地元紙でも紹介された有名人です。

また薪の多さは店が繁盛している証。

カナさんは若い頃から母のオミトさんを手伝い、店を盛り立ててきました。

88歳まで現役で店に立ち、92歳で亡くなるまで店のことをずっと気にかけていたそうです。

そんなカナさんの気持ちに応えるように弘樹さんは店を継ぐことを決心。

伝統的な木灰そばを未来へ継承し、守り続けています。

きしもと食堂(本店)|本店内観1

テーブルと座敷のある小さな店内。

民家を利用した建物から、ノスタルジックな雰囲気が漂い、親戚の家に遊びにきたような感覚に。

壁には著名人のサインや写真がずらりと飾られていて人気の高さがうかがえます。

きしもと食堂(本店)|本店内観2

民家の名残が感じられる奥の座敷には、オミトおばぁをはじめご先祖様の仏壇が。

長年店を支えてきたご先祖様が見守ってくれているようです。

きしもと食堂(本店)|厨房の小窓

奥に厨房のある小窓から、出来上がった沖縄そばがどんどん出てきます。

他店ではなかなか見ないスタイルなので、注目していると面白いですよ。

きしもと食堂(本店)|厨房の茹で窯

おばぁ達の手作りの厨房は修復を繰り返しながら大切に使われています。

白い高炉や塩の入った器は、ヒヌカン(火の神)と呼ばれる沖縄の昔ながらの習慣で、家の台所や火を司る神様が祀られています。

主に女性が拝むこともあり、人手不足のときは男性スタッフも入るそうですが、基本的には女性のみが立入れる神聖な場所です。

窯の中の穴は外の煙突と繋がっていて、昔使われていたものが、そのまま残されています。

また名前や電話番号などのメモが壁に直接書かれているのですが、今となっては、いつ誰が何のために書いたのか分からないのだとか。

きしもと食堂(本店)|手書きの駐車場地図

ちなみに駐車場は、あの有名な「新垣ぜんざい」の裏側、川沿いにあります。

満車の場合は、もとぶ町営市場の駐車場にも停めることができるので、ちゃんと指定された場所に停めてくださいね。

2.昔ながらの製法で、薪を燃やして作る木灰そば

きしもと食堂(本店)|三枚肉そば

多くの店で、麺は小麦粉と塩、かん水で作られていますが、「きしもと食堂」では昔ながらの「木灰(もっかい)」を水に入れてできた上澄み(灰汁)を、かん水の代わりに使用しています。

そうすることで、かん水では出ない、独特の歯ごたえやのど越し、風味を生み出すことができるそうです。

薪の需要が少なくなった現代では、木灰そばは手間がかかり、また、かん水が簡単に手に入るためほとんど作られなくなりました。

「きしもと食堂」は伝統的な木灰そばの製法を守り続ける貴重な一軒なのです。

きしもと食堂(本店)|「そば(大)」と「そば(小)」

カツオの産地としても有名な本部町。

毎朝、時間をかけてじっくり煮込んだ濃厚なカツオ出汁に醤油ベースのスープが、コシのある麺と相性抜群です。

分厚い三枚肉(豚のばら肉)は、柔らかく味がしっかり染みています。

種類は潔く「そば(大)」と「そば(小)」の2つのみ。

きしもと食堂(本店)|じゅーしー(炊き込みご飯)

沖縄の伝統的な家庭料理のひとつ「じゅーしー(炊き込みご飯)」も、毎日時間をかけ愛情を込めて手作り。

昼過ぎには売り切れることもある人気メニューです。

豚肉と人参、昆布、しいたけ、かまぼこ、ネギと具たくさんで栄養も満点。

隠し味に入れた、三枚肉の煮汁と沖縄そばの出汁の旨味が効いています。

3.素材に、技に、受け継がれるこだわり

きしもと食堂(本店)|製麺風景

麺は広い厨房と製麺場のある姉妹店「きしもと食堂 八重岳店」で毎朝作られています。

茹でた麺は粗熱が取れたら、冷蔵庫で一晩寝かして熟成させ、独特の歯ごたえや風味を引き出します。

きしもと食堂(本店)|麺をゆでる窯を薪で沸かす

麺を茹でるときに窯で薪を焚き、後に灰となった木灰を使用。電気やガスが普及していなかった時代だからこそ生まれた製法です。

また木灰には豊富なミネラルが含まれ、身体にやさしく安心。

灰でさえも材料の一部に利用してしまう、先人たちの知恵が詰まっています。

きしもと食堂(本店)|ぎっしりと詰まれた薪

店の裏に積まれている薪。

固い木が適しているそうで、本島北部エリアに豊富にあるイタジイの木や、固有種のイジュの木を使用し、薪まで地産地消にこだわっています。

きしもと食堂(本店)|器に盛られた麺

多くのお客さんが訪れるので、早く提供できるよう麺は器にのせて準備されています。

絶妙なバランス感覚も熟練のなせる技!?

きしもと食堂(本店)|麺の湯切りをするスタッフ

注文を受けてから、麺と器を出汁で温めながら盛り付けて出来上がり。

お湯ではなく、薄めの出汁と、通常の出汁の二段階で温めることで、スープが薄まるのを防いでいます。

4.行列を避けるなら「きしもと食堂 八重岳店」も一案

きしもと食堂|八重岳(やえだけ)店

本店が混み合っているときは、車で約5分のところにある「きしもと食堂 八重岳(やえだけ)店」に足を運んでみてはいかがでしょうか?

四方を緑豊かな山々に囲まれた自然あふれる場所で、本店とはまた違った魅力があります。

●きしもと食堂 八重岳(やえだけ)店

住所/沖縄県国頭郡本部町字伊野波350-1

TEL/0980-47-6608

きしもと食堂|八重岳(やえだけ)店店内

木のぬくもり溢れる広々とした店内。充実の席数で、営業時間も長く、定休日もありません。そばの価格は本店と同じなのでご安心を。

きしもと食堂|スタッフの皆さん

八重岳店の宮城さん(写真の左から2番目)は生まれも育ちも本部町。

四代目の仲程さんと同じ本部小中高校出身で、先輩と後輩の仲です。

宮城さんは周りからの信頼も厚く、仲程さんが不在のときは業務全般を任されています。

終始和気あいあいとした雰囲気の中、みなさんの素敵な笑顔が印象的で、沖縄そば愛が伝わってきました。

地元では、沖縄そばといえばココといわれるほどの名店「きしもと食堂」。

世代を超えて愛され続ける老舗の味をぜひあなたの舌で確かめてみませんか?

Photo&text:金城 絵里子

(取材:2020年4月)

住所: 沖縄県国頭郡本部町字渡久地5

電話番号: 0980-47-2887

営業時間: 11時~17時30分(売切れ次第終了

定休日: 水曜

駐車場: あり

座席: 約35席

喫煙: 全席禁煙

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