まぶしい太陽をたっぷり浴び、沖縄特有の土壌で育った島野菜。
色、味ともに濃く、栄養満点で長寿の源としても注目を集めています。
「ナーベーラー」「ハンダマ」「フーチバー」など地元に住んでいてもその全ては知らないという人も多く、珍しい野菜がたくさんあります。
そんな島野菜を主役にした沖縄そばはいかがでしょうか?
1.すべて店主自ら作る!自産自消の沖縄そば屋

沖縄そばの老舗「むかしむかし」は本島北部の名護市から県道84号線を本部町へ向かって進み、人気観光スポットの「ナゴパイナップルパーク」「OKINAWAフルーツらんど」を過ぎて約1kmのところにあります。

1991年の創業当時は同じ名護市内でも、目の前に海のある場所で「やんばる船」という名前の沖縄そば屋さんを営んでいました。
現店主の池原 奈織さんのご両親がオープンしたそのお店は、「むかしむかし、人々がしていたような自給自足の生活がしたい。自分のお店で提供する食材は自分で作る『自産自消』をしたい」との思いから、2010年に裏に畑のある現在の場所へ移りました。
そのときの思いが店名の由来にもなっています。
木の温もりあふれる空間は、内装からテーブルや椅子、沖縄そばを入れる器まですべて手作りなんですよ。

畑は囲炉裏のあるテラスから眺めることができます。

ゴーヤや島人参、ツルムラサキなどの野菜はもちろん、ハママーチ(琉球よもぎ)やクワン草などの薬草から、ドラゴンフルーツやシークヮーサーなどの果物まで約20種も栽培されています。
さらにヒージャー(山羊)そばで使用する山羊も放牧で飼育されています。
2.沖縄の大地の恵みをいただく島野菜そば

こちらは畑で採れた島野菜のほんの一部です。
池原さんは「私は沖縄に生まれて、沖縄で育ちました。自分たちが食べてきたものをお店で提供できることは素晴らしいことだと思います。ずっとここにいたら分からないけれど、ここを出たときに土地の持つ魅力に気づかされました。観光で訪れた方にもその魅力を伝えて、『おいしかった』だけでなく『楽しかった』『感動した』という言葉をいただけたら嬉しいです。毎日の大変な畑仕事や山羊の世話も、その一言があればすべて報われます」と笑顔を見せます。

旬の味覚を朝採りした「島野菜そば800円」。
この日の野菜は時計回りに、ハンダマ、ナーベーラー(ヘチマ)、ゴーヤ、ハママーチ(琉球よもぎ)、ミニトマト、島人参、ドラゴンフルーツの花の芽、平いんげん、また中央にあるのがクワン草の花です。
どれも香りや味が強く、色も鮮やかで濃いのが特徴、栄養素がたくさん含まれています。
どんな島野菜がでてくるかは時期や天候などによっても変わるので、それは訪れてからのお楽しみ。
スープは豚骨とカツオの出汁を合わせた、あっさりながらもコクのある味わいです。
お肉はソーキと三枚肉の2種類が楽しめるのも嬉しいですね。
3.手間をかけて昔ながらの製法で作られる麺

「むかしむかし」の麺は木灰(もっかい)麺といって、池原さん自ら裏の山から木を切り出して薪を作り、その薪を燃やして出た灰を水に混ぜて「天然カン水」を作ります。
それを小麦粉と合わせてこねるという、とても手間のかかる伝統的な製法で作られています。
さらに夏はゴーヤを練り込んだ緑色の麺、秋は紅芋を練り込んだ紫色の麺に変わり、素材の風味がより食欲を増してくれます。 沖縄そばは、ほかにも「三枚肉そば(大)750円(小)650円」「ソーキそば(大)850円(小)750円」「ヒージャー(山羊)そば(大)1,350円(小)1,050円」がありますよ。

1人1品注文するとサービスで付いてくるデザート。
この日は畑で採れたグァバのゼリーです。
時期によって、黒糖やサンニン(月桃)の葉、野生のキウイなど食材はいろいろ変わります。

作る人と食べる人、人と自然の距離が近い「自産自消」を体験すれば、この土地への理解がきっとより深まるはずです。
“むかしむかし”から伝わる沖縄そば、ぜひ一度食べてみてください。
Photo&Text:金城 絵里子
住所: 沖縄県名護市中山694-1
電話番号: 0980-54-4605
営業時間: 11:00~17:00(売切れ次第終了)
定休日: 水・木曜(祝日の場合は営業)
駐車場: あり

