1.開放感と美しい海の景色で、地元でも人気のドライブコース
沖縄本島中部、勝連(かつれん)半島の沖合約5kmに浮かぶ平安座(へんざ)島。
半島との間には遠浅の海が広がっているため、離島でありながら昔から干潮時には歩いて渡ることもできました。
戦後の初期にはアメリカ軍払い下げのトラックを改造した水陸両用車が人や物資を積んで、島と半島の間を行き来していたそうです。
その後、平安座島に巨大な石油備蓄基地ができることになりました。
その際、石油会社は地元への見返りと、パイプライン設置のために半島と島を結ぶ道路を造りました。
それが現在の海中道路のルーツです。
その後県道となり、幅も広がって4車線となりました。
また、中ほどには広い駐車場をそなえたロードパークが完成。
地元の特産物販売店やレストランなどが入る「海の駅あやはし館」も開業し、観光スポットとしても人気を集めるようになりました。
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海中道路は、沖縄県民にとっても人気のドライブルートとなっています。
それは、頭上に広がる大空がもたらす開放感、左右に広がるエメラルドグリーンの海、途中に真っ赤な橋があって、大部分が直線道路なのに変化があることなどが要因です。
県内在住者でもここに来るとある種の非日常感が味わえ、リフレッシュもできます。
那覇空港からは、高速道路を利用すれば約1時間でうるま市の勝連(かつれん)半島側にある海中道路入口に到着できます。
入ったとたんに驚くのは、頭の上が突然開けること。
それもそのはず、道路の両脇には建物も山もなく、海が広がるだけなので空も180度に広がるからです。
これこそ、この道の魅力のひとつで、まるで海の上を走っているような開放感が味わえます。

入口の信号から平安座島に向けて1kmほど行くと赤く塗られた橋があります。
海中道路は基本的に海を埋め立てて造られていますが、途中に橋も架けられています。
この橋は平安座海中大橋といい、「PC斜張橋」と呼ばれる一種の吊り橋です。
鮮やかな赤い色が空や海のブルーと鮮やかなコントラストを作り出し、風景のアクセントになっています。

もちろん、この橋の役割は景色の一部となることだけではなく、行き交う船の航路と海水の流れ道を確保することでもあります。
石油会社の出資で1972年に完成した最初の海中道路にも橋がありましたが、当時は長さ30mしかありませんでした。
しかし、年々交通量が増えたため道路も拡幅され、それに合わせて橋も架けかえられました。
現在の平安座海中大橋は長さが280mあります。
2.白砂のビーチでは海遊びも堪能できる

海中道路の魅力のひとつは、白砂も美しいビーチがあることです。
泳ぐのはもちろん、ウインドサーフィンやフライボードを楽しむ人々の姿も見られます。
さらに釣りをする人、干潮時には潮干狩りをする人なども見られ、ドライブだけでなく、海の遊びがいっぱい堪能できることも海中道路の特徴といっていいでしょう。






とはいっても、海に入らないで渚を散策するだけでも十分リフレッシュできます。
このあたりは西海岸ほど観光地化されていないこともあり、比較的人が少なく、のんびりした気分で歩けます。透明度の高い海や、その先に横たわる沖縄本島や隣の島々の眺めも絶景です。
3.海の駅あやはし館は休憩、食事、ショッピングに便利

海中道路の中間点付近には「海の駅あやはし館」があります。船の形をした建物が特徴で、これはマーラン船を模したものです。
マーラン船は、中国から伝わった造船技術を元に造られた沖縄独自の船で、別名「やんばる船」とも呼ばれます。
「やんばる」とは本島北部地域を指すことばで、戦前までやんばるの産物を中南部へ運ぶ役割を担っていました。
陸上の交通手段が発達していない時代には、物資の輸送は船の方が効率が良かったのです。
平安座島はマーラン船をはじめとする海上交通の要所として繁栄していました。
そんな往時をしのぶ象徴を海の駅あやはし館は建物の造形で表現しているわけです。
館内にある海の文化資料館では、復元されたマーラン船を見ることもできます。
さらに長い間海上輸送で活躍したマーラン船関連の資料を常設展示しており、海に生きた先人達の暮らしや文化を垣間見ることもできるようになっています。
海の駅あやはし館ではランチもおすすめ。

<うるま市そばランキング1位にも輝いた海中茶屋のお料理>
館内の食堂では沖縄そばなどの定番メニューからお刺身やこの地域特産のモズク、さらには海ぶどうなどを使った海産物料理も提供しています。
特に豪華な伊勢エビ定食は舌もお腹も大満足する逸品。
また、外にあるテーブルで景色を楽しみながら料理に舌つづみを打つこともできます。
さらに、こちらではバーベキューも提供しており、手ぶらで行っても海を見ながらのBBQパーティが楽しめます。

さらに海の駅あやはし館には、他ではなかなか手に入らない品を揃えたお土産品店やマリンスポーツデスクもあります。
文化に触れるだけでなく、グルメやアクティビティ、ショッピングなど、いろいろ楽しめるスポットとなっているのです。

海の駅あやはし館の前には、道路をまたぐ形で歩道橋が設置されていて、ここからの景色もまた絶景です。
海中道路の全景と、左右に広がる太平洋を一望のもとにできるからです。
車窓から見るのともまた違った眺望に感動を覚えることは間違いありません。

歩道橋にはなにげなくアート作品のような飾りが施されており、景色といっしょに楽しめるようになっています。
海の駅あやはし館を過ぎると、やがて平安座島に至り、海中道路も終点となります。
とはいえ県道はまだ続き、その先にはやはり絶景の海に囲まれた宮城島や伊計(いけい)島、右に曲がれば浜比嘉(はまひが)大橋を経て、神々が住む島といわれる浜比嘉島に渡ることもできます。
海中道路は、こうした魅力的な島々への架け橋ともいえる存在です。

Text: 吉田 直人
Photo:根原 奉也/緑川徹也
(取材:2020年3月)
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