那覇空港から車で約1時間半。
沖縄本島北部・大宜味村(おおぎみそん)の自然豊かな“やんばる”地域で泡盛を製造する「やんばる酒造」へ。
島酒造りを見学できるツアーを体験してきました。
1.本島最北端の泡盛酒造所。やんばる育ちの島酒造り

やんばる酒造は1950年(昭和25年)に田嘉里(たかざと)地区の地域の人たちの出資により創業し、今年で73年目を迎えます。

やんばる酒造が製造する「まるた」や「やんばるくいな」をはじめとした泡盛は、生産量のおよそ7割が地元・やんばるで消費されているという、名のとおり地産地消の島酒の酒造所です。
元々の始まりは、「皆で飲むための島酒を作ろう」という想いから、集落の人たちみんなで出資して共同で創業したというめずらしい成り立ち。
創業当初から村の人が大切にしてきた“人と人の繋がり”を絶やさず、70年以上経つ今も泡盛文化を継承し続けています。

やんばる酒造の代表的な泡盛。
中でも「まるたマイルド」(右)は、やんばる地方では「しまー(泡盛)といえば“まるた20度”」というほど地元でなじみ深い泡盛。
すっきりと水割りで飲むのが定番です。
池原さんイチオシの「まるた古酒(30度)」(左)は、お米の風味の香ばしさとうま味があるので、冬は熱かんやお湯割りにも合うのだそう。

10年以上熟成させた3種類の古酒をブレンドした蔵元限定の「大山原(うふやんばる)」。
2022年の泡盛鑑評会で県知事賞とブレンダー・オブ・ザ・イヤーを受賞した特別な泡盛です。
2.古酒の試飲ができる!酒造所見学ツアー

やんばる酒造所の見学ツアーは約30分。
「やんばるくいな」ミニボトル(古酒40度)のお土産付きで大人1名1,000円で体験できます。※お子さんは無料です
泡盛造りのプロフェッショナルが酒造所内を案内してくれます。
午前と午後1組ずつのご案内(もちろん個人見学もOK)なので、泡盛の世界をじっくりと堪能できます。
大人はもちろんですが、沖縄の伝統文化である泡盛の製造工程が学べる社会科見学として、お子さん連れファミリーも楽しめます。
泡盛の試飲もできるので、ハンドルキーパーの方との来訪をおすすめします。

「泡盛」は、沖縄独自の蒸留酒。
琉球王国時代から600年以上の歴史を持つ由緒あるお酒です。
主原料となるタイ米(インディカ米)は水分量を含まずパラパラなので、高温多湿な沖縄での泡盛造りに適しています。
「黒麹(くろこうじ)菌」を用いて原料のタイ米を麹にし、「全麹仕込み」という手法で全量を一度に仕込んで発酵させ、醪(もろみ)を作ります。
そのもろみを「単式蒸留機」で蒸留したお酒です。
3年以上熟成させたものを古酒(クース)といいます。

やんばる酒造では、酒造所近くの山から汲み上げた天然水を使用しています。
このミネラル豊富な中硬水は、昔から集落の人たちが水路を守り続けてきた、まさに“命のお水”。
このお水を仕込み水として使用することで、泡盛造りの要である黒麹菌のチカラを最大に発揮させ、良い麹を造り、泡盛に豊かな風味と味わいが生まれます。


ズラリと並んだ発酵タンク。
タンク内ではグツグツと泡が出ていて、ほんのりアルコールの香りと発酵中の香ばしいにおいがたち込めています。

泡盛の味わいの要となるのが「蒸留」の工程。
「単式蒸留器」と呼ばれる蒸留機を用います。
「単式蒸留」は、適度にアルコール発酵したもろみを蒸留釜で熱して、アルコール分を含んだ蒸気を冷やして高濃度のお酒にするというシンプルな製法です。
蒸留直後のアルコール度数は70度前後に!
そこにやんばるのおいしいお水で割水をして度数を調整し、地下のタンクに貯めて1年以上寝かせます。
蒸留したての状態はまだ荒い味わいですが、1年以上寝かせることでお水とアルコールの交わり合いが良くなり、お米の甘みが出てくることでなめらかな味わいへと変化します。

いよいよ最終工程。
約1万リットル入る巨大な貯蔵タンクで、さらに長い年月をかけてゆっくり、じっくりと泡盛を熟成させて島酒の旨みを最大限に引き出します。
3.地元の生産者×クリエイターでタッグを組んだ新商品

今回案内してくれた池原 文子さん。
4代目の父・弘昭さんから引き継ぎ、2023年から5代目を務めながら4児を育てるパワフルママです。
ロングセラーの泡盛ラインナップに加えて、「地元に根ざし、地元に還元」をモットーに、地元の生産者やクリエイターとタッグを組み、やんばる発信の魅力的な新商品を数多く生み出しています。

世界自然遺産・やんばるの生き物をモチーフにした「やんばるのいきもの」。
ヤンバルクイナ、ノグチゲラ、リュウキュウヤマガメなど10種類の生き物がかわいいパッケージが魅力で、初心者にも手に取りやすい泡盛です。
15度で飲みやすく、180ミリリットルの小瓶なのでお土産にも大人気!

地元でものづくりをする仲間ではじめた「やんばるつながリキュール」プロジェクト第1弾として、生姜とカラキ(やんばるの山に自生するシナモンの仲間)のクラフトリキュールが誕生しました。
ベースとなる“泡盛”はもちろん「やんばる酒造」製造。
味の決め手となる“シロップ”は国頭村のカフェ「カレーとおやつ蒼翠」が監修。
パッケージの“デザイン”は、やんばる酒造の商品や空間デザインも手掛ける「Sunsign Design」。
生姜は地元農家の「リマファーム」産。

原材料のひとつひとつにこだわりあげ、クリエイティブも含めてやんばる産。
“人と想いがセッションする”というコンセプトから、カラキリキュールは「スパイシーセッション」と名付けられました。
今後の展開も楽しみな注目のプロジェクトです。
4.オリジナルグッズが豊富な直売所でお土産選び

定番の泡盛から新商品までそろう直売所へ。
酒造所に隣接する直売所は2020年にリニューアル。
昔ながらの蔵の雰囲気を活かしデザインされた空間が心地よく、じっくりお土産選びや試飲が楽しめます。

酒造所見学のあとは、古酒の試飲が楽しめます。
度数や銘柄による味と香りの違いを飲み比べできる贅沢なひと時。

直売所では、1合、2合単位で古酒を超お値打ち価格で購入もできます。
回収したリサイクル瓶を活用しているので、思い出を瓶に詰めてエコにお持ち帰りしましょう。

泡盛以外にも、オリジナルのTシャツや雑貨、泡盛ケーキ、自家製コーレーグースが作れるキットなど思わずほしくなるグッズがたくさん。
大宜味名産のシークヮーサーやカラギの商品も要チェックです。
やんばるの大自然の中で、大切な文化を継承し続ける造り手の想いに触れることで、一度行くと大好きになるやんばる酒造。
やんばるドライブの目的地として、足を運ぶ価値大アリのおすすめスポットです。
Text:花城 綾子
Photo:松本 佳恵
(取材:2023年6月)
住所: 沖縄県国頭郡大宜味村字田嘉里417
電話番号: 0980-44-3297
営業時間: 9:00~17:00
定休日: 日曜日(2023年10月以降)、旧盆、年末年始
駐車場: あり(3台まで)
その他: 酒造見学 1,000円(大人1名/試飲・泡盛ミニボトルのお土産付き)※事前予約必須。午前・午後1組ずつ実施
店舗詳細URL: https://takazato-maruta.com/