青い海と青い空、そして照りつける太陽と、ひんやりスイーツ需要の高い沖縄県に、沖縄らしい気候を全身に感じながら、最高のひとくちを頬張るのにぴったりなジェラート店があります。
沖縄って、果物が美味しいイメージがありますよね?
実は、そんな沖縄の芳醇な果物を、そのまま食べるよりも『さらに素材の美味しさを楽しむことができる、ジェラートづくり』に挑戦したお店があります。
そのお店が、アジアジェラート界を牽引する柴野大造(世界最大のジェラートコンペティション「Sherbeth Festival」2017年度世界チャンピオン)と 米盛勝也(世界ジェラート大会2位)のふたりが情熱を注ぎ込んだジェラートを堪能できる「Yanbaru Gelato(やんばるジェラート)」。
今回は、世界1位と世界2位のふたりが織りなす絶品ジェラートとその開発秘話、今後の展望についてオーナーさんに伺ってきました。
美味しいだけじゃない、ジェラートに込められた想いを知ると、もっと沖縄旅行が楽しみになるはず。
1.沖縄県内に7箇所に店舗を構える「やんばるジェラート」

【写真:やんばるジェラート la Vous(ラ・ボウス)店】
やんばるジェラートの名前にも入っている「やんばる」は、沖縄本島北部地域の呼び名。
手つかずの自然が残り、数多くの希少生物が生息する雄大な場所です(2020年に世界自然遺産登録予定)。
名前の通り、お店は「やんばる」にあるのかなと思いきや、本店は沖縄本島中部にある宜野湾(ぎのわん)市。
もちろんやんばる地域の「本部町」にも店舗がありますが、宜野湾や那覇市内など、沖縄県内に7店舗あり(2020年1月現在)、「無性にやんばるジェラートのあの味が食べたい・・」と思った時、すぐ最寄りの店舗に足を運ぶことができます。

【写真:やんばるジェラート la Vous(ラ・ボウス)店内)】
そんな中で一番のおすすめは、宜野湾にある本店「やんばるジェラート la Vous(ラ・ボウス)店」!
こちらでは世界チャンピオン柴野さんの一番弟子である、米盛勝也(世界2位)さんが店長を務めています。
米盛さんは元々、県内のリゾートホテルで働いていましたが、パティシエになりたいという昔からの夢を叶えるため、世界ジェラート大使である柴野さんの元で1年半修行を積みました。
そして見事2017年、ジェラートの本場イタリアで開催されるジェラートの国際大会で2位に!
たった1年半で日本人初2位を獲得した実力派であり、弱冠22歳で全国最年少ジェラートマエストロになりました。

【当時の新聞】
ジェラートのフレーバーは、そんな柴野さんと米盛さんが開発!
のジェラート職人ふたりが手がけたフレーバーが並ぶ贅沢なショーケースは、見た目にも可愛らしく、写真を撮る人も多いのだとか。

しかも「la Vous」なら、米盛さんが盛り付けてくれるという嬉しい特典も。早速盛り付けをお願いしました。

いい感じにヘラでジェラートを巻きつけて

すくい上げ、形を整えてくれます。(盛り付けの美しさも、ぜひ楽しんでください)

盛り付けにも技術が現れる、美しく尖ったジェラート。
見た目が奇麗だと、ひとくちめの楽しみが増しますね。
数種類を盛り付けて、完成!

めちゃくちゃ可愛らしいビジュアルになりました!
フレーバーは、マンゴー(オレンジ)、スイカ(ピンク)、ミルク(ホワイト)です。
ちなみにこちらの人気メニューはマンゴー、紅イモ、ミルクなのだそうですが、一番リアクションが多いのはスイカ味なのだそう。
あまりにもスイカのみずみずしさが再現されているため、スイカを食べた人は口々に「あ、スイカだ!」「めっちゃスイカ(笑)」となるのだそうですよ。(ライターもなりました)
スイカの衝撃はもちろん、ほかのどのフレーバーも味わいがかなりリアル。
例えばマンゴーは、沖縄マンゴーの濃厚さはもちろん、ねっとりとした食感までも再現されており、本物のマンゴーよりマンゴーなんじゃないか?と錯覚してしまいます。
ちなみにミルクは、100年の歴史を持つ宮平牛乳を使用。ミルクになる前の生乳を仕入れ、店舗で加工するというこだわりっぷり。
ジェラートは持ち帰り・県内県外発送もできるので、お土産品にもおすすめですよ。

すべてにおいて、不自然な甘さを一切感じないジェラート。
どのフレーバーを食べても、果物を食べているような不思議な感覚を味わうことができるので、『色々な沖縄のフルーツを送りたいけど、サイズ的にも価格的にも難しい。』そんな時にもぴったりです。
全てのフレーバーに“研究された感”が醸し出ているジェラート。
味の秘訣とやんばるジェラート誕生の秘密を、オーナーの國場和雄(こくばかずお)さんに伺いました。
2.開業のきっかけは「やんばる地域の果物廃棄を減らしたかった。」

写真はやんばるで採れたスイカですが、実はこのスイカは、スーパーや産直市場で販売できない「規格外商品」。
数年前、やんばる地域出身のオーナー國場さんは、沖縄独特の気候や台風などの影響により、このスイカのような規格外の果物が、年間でおよそ3億円分も破棄されていることを知りました。
國場さん「いわゆるB級品ですね。ただ見た目が少し悪いだけの美味しい果物が、数多く廃棄されていると相談を受けました。当時僕はホテルマンだったので、ホテルの朝食として利用することで解消を試みたのですが、まだまだ廃棄問題は解消されず。そして同じ時期に、勝山のシークヮサーからも相談を受けました。勝山のシークヮサーは、世界的にとても評価されている美味しさなんですが、実際はうまく流通できないことに悩んでいました。」

そこで國場さんは、「シークヮサーとジェラートは相性がいいのでは」と考え、知人だったジェラート職人の柴野さんを紹介。
柴野さんが勝山シークヮサーを使用したジェラートを開発することになりました。
開発後、「東京や大阪で見る果物と、沖縄の果物は別格だ」と、沖縄の食材に感銘を受けた柴野さん。
國場さん「あのとき、“沖縄の食材はジェラート職人にとって天国だ”という柴野の想いと、果物の廃棄を減らしたいという僕の想いが一致しました。そして、色々と話し合った結果、2015年12月に「やんばるジェラートla Vous店」をオープンしました。」
3.素材の味を商品開発!セロリ嫌いが多いイタリアでセロリ味を出品し、1位を獲得

どのフレーバーもみずみずしさや濃厚さなど、それぞれ果物の特徴が表現されるフレーバー。
中には「パインリンゴセロリ味」という独特のフレーバーまであります。
國場さん「パインリンゴセロリ味は、柴野が2017年のイタリアジェラート世界大会で1位を獲得したものです。柴野は以前から、食後の消化を促す“セロリ”をデザートとして挑戦したいと話していました。ですがジェラートの本場イタリアではセロリ嫌いな人が多く、コンクール向きではないと言われていたんです。」
― セロリ嫌いが多い中でセロリに挑戦するなんて、すごい勇気ですね(笑)
國場さん「難しいことにこそ挑戦したいという男なんです。イタリアの大会では2度出品したのですが、1度目は敗れました。しかし面白いのが、総合評価で4位だったけど、一般投票だけ見ると1位だったんです。セロリ嫌いのイタリア人の票を、1番多く獲得したのが柴野のセロリ味だったんですよ。」
― セロリ嫌いな人が投票したってことですよね?それは驚きです。。
國場さん「そうなんです。柴野も『これはいける』と改良を重ね、4か月後のコンクールで見事1位を獲得しました。」
およそ4か月で改良し、優勝するなんて凄い。そしてそんな奇跡の商品が沖縄で食べられるなんて、感動です。
?セロリも試食させていただきましたが、鼻を抜けるような風味とさっぱりした後味。
暑い日はもちろん、ステーキやフルコースなど、ボリュームのある食事を終えた後にも食べたい一品。

シークヮサーは絞った時に感じるかすかな皮の香りもあり、『ここまで再現できるのか』と感動すらあります。
すべての商品がどこまでも自然で、不自然な甘さが一切ありません。
デザートというより、果物を味わっているような感覚です。
國場さん「シークヮサーに関しては、もっと全国的に広めたいと思っています。それこそ、柚子を超えてやろうという気持ちですね。これは今後も挑戦し続けたいです。」
4.沖縄をアジアで一番ジェラートの美味しい場所に!流通のためパウダーを開発

國場さん「これは今開発中のパウダーです。」
― パウダー???
國場さん「僕の夢は、沖縄に来た人がどこへ行っても美味しいジェラートが食べられるようにすること。沖縄の果物の消費を増やしながら、沖縄をアジアで一番ジェラートが美味しい場所にしたいんです。そのために今、美味しい果物に合うパウダーを作っています。果物+パウダーを機械に入れると、美味しいジェラートが素人でも作れるようにするためです。」
― 美味しいジェラート作りの技術を独占せずに、広めたいということですか?
國場さん「そうです。僕はジェラート作りのハードルを下げたいと思っています。最初は沖縄県内の果物に合うジェラートパウダーを開発し、まずは沖縄をアジアで一番ジェラートが美味しい場所にする。のちのち、県外や海外からも現地の果物を送ってもらい、それぞれの果物に合うパウダーを研究・開発し、送り返す。そんな風に、その土地の果物にあわせた美味しいジェラートを開発し続け、世界中にその土地ならではの美味しいジェラートを流通していきたいと思っています。」

【米盛さんと國場さん。米盛さんは國場さんの甥っ子だそうで、仲良しです】
イタリア人以外では唯一のジェラート大使である柴野さんと、その1番弟子が作り上げた「やんばるジェラート」の味。
名だたるふたりが苦労の末に作り出した味を、惜しむことなく展開するというお話に、ふと博多明太子発祥の店「ふくや」さんのストーリーを思い出しました。
明太子発祥でありながら、明太子の作り方を惜しみなく様々な人に伝え、いつしか「ふくやの明太子」ではなく『博多名物 明太子』になったというストーリー。
「果物の消費を増やしたい」「沖縄をアジアで1番のジェラート大国に」という話からは、利益よりも地域への貢献に重きを置いた、國場さんの沖縄愛を感じました。
ぜひ、『果物よりも果物なんじゃないか』なフレーバーを味わいに、やんばるジェラートに足を運んでみてはいかがでしょうか。
Photo&text:三好 優実
(取材:2020年1月)
住所: 沖縄県宜野湾市嘉数3-19-1
電話番号: 098-943-5434
料金目安: シングル400円/ダブル500円/トリプル600円(コーンの価格はカップ価格+50円)
営業時間: 11:00~19:00
定休日: 第1火曜日
駐車場: あり(店舗横に1台)
その他: ※今回取材した店舗含め、やんばるジェラートは沖縄県内に7店舗あります。詳細は公式サイトをご確認ください。
店舗詳細URL: https://yanbarugelato.com/
