さとうきび畑や昔ながらの集落。
沖縄の原風景が見られる、今帰仁(なきじん)村の高台に「カフェこくう」はあります。
青空によく映える赤瓦屋根の一軒家。
沖縄本島北部やんばると呼ばれる森の豊かな自然に囲まれ、のどかな空気感で旅人を魅了しています。
1.木の温もりと開放感あふれる空間

見事な木造の建物は、宮大工の技術によって、なんと釘を使わずに、木だけで建てられています。
年月とともに、木の色艶が表れる、味わい深い空間。
台風が多い沖縄では強度が心配になりますが、意外にも雨風にさらされる事で木と木の繋ぎ目が締まってより丈夫になるそうです。
テーブルやイスなどの家具も、木の素材からこだわって作られています。

爽やかな風が心地よいテラスは特等席。
緑の向こうに広がる、海の青のグラデーションに心を奪われます。
天気がいい日には、伊是名(いぜな)島や伊平屋(いへや)島まで見渡せますよ。

店主の熊谷祐介さん、友紀子さん夫妻。
沖縄が好きで、いつか住んでみたいとは思っていましたが、それはまだ先のことだと考えていたそうです。
しかし思い立ったが吉日。
祐介さんがちょうど30歳のときに沖縄へ移住することに。
昔ながらの沖縄の生活が残されている今帰仁村が気に入って、「カフェこくう」をオープンさせました。

熊谷さん夫妻は、二人の子どもがまだ小さかった頃、子守をしながらお店を営業していたこともあり、子ども連れの方でも大歓迎です。
赤ちゃんをハイハイさせてもいいし、庭の芝生で自由に遊んでも大丈夫。
「自分たちも自由に楽しく料理を作っているだけなので、お客さんも自由に楽しく過ごしてほしいです」と笑顔のお二人。
2.沖縄の島の恵みをふんだんに、野菜が主役の料理

新鮮な島野菜がたっぷり味わえる「こくうプレート」1,300円(税込)。
「今帰仁村の農家さんから毎朝届けられる島野菜は、無農薬や自然農で育てられているので、色も味もくっきりしていて濃い。そのまま蒸して塩だけで食べてもおいしいです。だから、ゴーヤも苦いものは、苦いまま食材本来の味を楽しんでもらいたいと考えています。」

はじめは島野菜の使い方が分からなくて、地元の方に教えてもらったそうです。
ていねいに手で土を落として洗って下ごしらえ。
さっと炒めたり、ことこと煮たり心を込めて調理しています。
野菜が少ない時期には、旬の時期に作っておいた保存食を使うこともあります。

島ネギと水菜のかき揚げとさつまいもの天ぷら。
もともと和食の料理人だった祐介さんは、「島の野菜は、できるだけシンプルな味付けにして、出汁やスパイスでコクを出すようにしている」といいます。
食材と真摯に向き合う姿勢が、多くのお客さんに支持される理由なのです。
3.作家さんの手仕事の器と琉球ガラス

木製のカウンターには、作家さんの作品が並んでいます。
鮮やかな色合いに、ユニークな形、手に馴染むような質感。
どんな素敵な器が出されるのか、考えるだけでわくわくしてきます。
小泊良(こどまりりょう)さんや東恩納美架(ひがしおんなみか)さん、ナマケモノ工房hanaの作品など、沖縄県内の作家さんや工房のものが多いそうです。

温かみのある柔らかなフォルムの琉球ガラスは、工房・ギャラリー日月(ひづき)の作品です。
沖縄の野菜を、沖縄の土や素材で作った器でいただく。
地のものは地のもので合わせると相性がいいのは器も同じです。
「カフェこくう」には、心も体も満たされる不思議な力がありました。
Photo&text:金城 絵里子
(取材:2019年11月)
住所: 沖縄県国頭郡今帰仁村諸志2031-138
電話番号: 0980-56-1321
営業時間: 11時30分~17時(ラストオーダー16時)
定休日: 日曜日・月曜日
駐車場: あり