第二次大戦後、27年間にわたって米軍統治下にあった沖縄では、アメリカの食文化が多く入ってきました。
ステーキもそのひとつで、安くておいしい牛肉がたくさん入ってきたため、多くのステーキ専門店ができて、米軍関係者や地元客でにぎわったものでした。
ステーキハウス四季もそうしたお店のひとつとして1972年、現在の沖縄市に開業し、2022年には50周年を迎える老舗となりました。
このお店の特徴は、なんといっても客の目の前でコックさんが鉄板で肉を焼いてくれること。
そのパフォーマンスや味で、半世紀にわたり多くの支持を集めています。
1.半世紀の道のりは沖縄グルメを代表するステーキ文化の一翼を担う歴史でもあった
ステーキハウス四季は現会長の當山政順さんがオープンさせました。
しかし、當山さんは料理人ではなく、ましてやステーキの専門家でもありません。

當山さんは当時、ステーキを焼く鉄板を作っていました。
それをステーキ店に納入していたのですが、店の繁盛ぶりを見て有望だと考え、自身もステーキ店の出店を決意したのだそうです。
それが、現在のコザ・ミュージックタウンのあたりでした。
嘉手納基地にも近く、多くの米軍関係者がにぎやかに闊歩していたころです。
當山さんは料理人を集めて開店にこぎつけます。
当初は、お客の6割から7割はアメリカをはじめとする外国人でした。
残りは地元の人です。
客の前で肉を焼くスタイルやメニューなど、お店のベースは今も当時とほとんど同じだそうです。
コロナ前は、特に北谷町美浜店では、地元客が入店できないほどアジア系の観光客が押し寄せていたそうです。
ということは、当初のスタイルは50年の時間を超えても、そして国境を越えても通用することが証明されているわけです。
近年、沖縄発のステーキチェーンが県外でも人気を集めていたり、飲んだ後のシメにステーキを食べるといった、いわば沖縄のステーキ文化が全国的に知られるようになっていますが、このお店は、そうした文化の一翼を担ってきたといえるでしょう。
2.大人の雰囲気漂う店内
ステーキハウス四季・沖縄市園田本店を訪れてみました。
店内に一歩入って気づくのは、高級感です。
このところステーキ業界では、立ち食いスタイルも現れるなど、カジュアル化が進んでいるように見受けられますが、このお店ではそんなことはまったくありません。
特別な日の食事、あるいはビジネスでの接待にも利用できる落ち着きと気品を備えています。

しっかりした作りの木製のイス、鉄板が組み込まれた大きなテーブル、壁を飾る装飾など、フォーマル感があふれています。

個室も豪華な雰囲気で、外国人セレブも満足しそうです。

壁には著名人のサイン色紙が掲げられています。
地元出身のオレンジ・レンジのサインが見られるのは当然として、プロ野球選手の名が目立つのも特徴です。
広島東洋カープが沖縄市内で春季キャンプを行うことが背景にあるのでしょうが、おいしいステーキはアスリートのスタミナ源としても役立っているのかもしれません。

このタイプのお店で雰囲気を盛り上げるのにもっとも重要な役割を担うのは、もちろんコックさんです。
コック帽をかぶって正装しているのでフォーマル感がありますが、笑顔はフレンドリーで、おもてなしに一役買っています。
ちなみにこの方、幸地研伍さんは園田本店の店長さんです。
3.目でも味わえるコックさんのパフォーマンス
では幸地店長に、実際に焼いてもらいましょう。

この日の素材はニュージーランド産のヒレ肉。オーストラリア産も多く使うそうです。

まずは付け合わせから。
この日はポテトと玉ねぎ、もやしと青野菜を焼いてもらいました。

続いてニンニクを投入。
いい香りが立ち上ってきます。

いよいよヒレ肉を投入し、ニンニクと合わせながら焼いていきます。
この際、コックさんは、お客さんと会話を交わして好みの焼き加減を聞いたりしながら、ベストな状態に仕上げていきます。
お客さんといっしょに作る感覚だそうで、そう考えると、お客さんの目の前で焼くのは単なるパフォーマンスではなく、おいしいステーキを提供するための技術のひとつといえそうです。
また、幸地店長は「心がけるのは目配り、気配り、心配り」だといいます。
これも客の目の前に立つコックさんならではのサービスマインドでしょう。

最後に赤ワインをひと振り。
煙が上がり、お客さんの期待感は、いやがうえにも高まります。

一品目が完成。
このお店の人気ナンバーワン、特選牛ヒレステーキです。
スープ、サラダ、ドリンク、パンかライスも付きます。
ステーキは四季オリジナルソースで食すのがおすすめ。

もう一品は、ロブスター(半尾)のタルタルソース焼 コンビネーション。
ステーキとロブスターの組み合わせは昔から人気で、これも沖縄らしい食文化といえます。

こちらは単品で提供される前菜のひとつ「シュリンプカクテル」。
ステーキやロブスターなどの高級食材を使っている上、目の前でコックさんが焼いてくれること、さらにインテリアの豪華さなどを考えると、値段もかなりいきそうな気もします。
ところが実際には、2000円くらいでもおいしいステーキが賞味できて十分満足できます。
その意味で、非常にコスパのいいお店といえます。
沖縄市園田は、沖縄の旧盆で行われるエイサーの活動が活発な、ディープな沖縄観光を楽しみたい方におすすめのエリア。
沖縄市園田の本店のほか、泡瀬、浦添市伊祖、そして観光ホテルや商業施設が多く立ち並ぶ、本島中部を代表するリゾートショッピングエリア、北谷町美浜にも店舗がありますので、沖縄旅行の際のドライブコースでご都合のいいお店を訪れてみてください。

text:吉田 直人
Photo:根原 奉也
住所: 沖縄県沖縄市園田3-1-25
電話番号: 098-933-5731
料金目安: 2,000円~
営業時間: ランチ 11:00~15:00/ディナー 15:00~21:00
定休日: 不定休
駐車場: あり
座席: 65席
喫煙: 全席禁煙
その他: ※コロナ禍のため、当面は営業時間や休業日などに変更の可能性がありますので、来店の際には事前の確認をおすすめします。
店舗詳細URL: https://www.the4seasons.jp/
