恩納村は西海岸リゾートの中心ともいえるエリアで、多くのリゾートホテルが立ち並びます。
そんななかに、広い敷地を備えた琉球ガラスの工房があります。

恩納ガラス工房は1978年にできた老舗。
現在では県内各地に琉球ガラスの工房や販売店がありますが、同工房のオーナーで「現代の名工」でもある宮國 次男氏が創設したころには、こうした施設はまだほとんどなかったそうです。



宮國氏はもともと生活用品としての琉球ガラス製品づくりから始めましたが、観光客にも受け入れてもらえるとの感触を得て、この工房を始めました。
いわば現在の琉球ガラス界におけるパイオニアのような人ですが、ほかにも先駆的な試みを行いました。
そのひとつが琉球ガラス体験です。
いまでこそ琉球ガラスの作品づくり体験は多くの施設で行われていますが、恩納ガラス工房は、その草分け的な存在だったのです。
また、一般の琉球ガラス工房があまり手を出していないジャンルにも、宮國氏は進出しています。
それがアートガラスと琉球瑠璃(るり)ガラス、ゴールドラビリンスです。
1.数百種の見本から選んで行う琉球ガラス体験

恩納ガラス工房では体験の際、まず見本を選びます。
それが、ショールームかギャラリーかと見まがうような部屋にずらりと並んでいます。
見本は一般的なグラスから精巧な装飾品まで、数多くの種類がそろっています。
そのため、最初は作りやすい品から始め、だんだんレベルアップしていくリピーターもいるそうです。
これらの見本には一つひとつ値札が付いていて、それが体験料金になるというユニークなシステムです。

なかにはこうしたハブのオブジェを選んで体験する人もいます。
グラスなどの器系とは作り方が違うはずなので、腕が上がってきたらチャレンジするのもよいでしょう。

なお、芸能人の方も多く体験に来られるようで、それを考えると一種の穴場なのかもしれません。
また、アクセサリーの体験メニューもあります。
こちらも見本の中から好きなものを選んでから行います。
2.生活空間を美しく彩るアートガラス

県内ではほぼここでしか作っていないだろうと思われるのが、アートガラスです。
これは玄関ドアにはめたり、間仕切りに利用したりと、いわば空間自体を演出するアイテムとして使われるもので、やはり宮國さんが先駆的に手掛けたものです。
たとえば、この工房を訪れたお客さんがガラス作品の美しさにほれて、自宅の新築や改築の際にドア用として注文してくるというパターンがあります。
そうした注文は沖縄県内だけでなく、全国各地から舞い込むそうです。
また個人宅だけでなく、マンションのロビーや飲食店のインテリア用としても需要があるといいます。
透過してくる光が織りなす美しさは、ガラスが芸術作品になり得ることを実感させてくれます。

洗面ボウルから石鹸置き、鏡まで、洗面台まわりをアートガラスで構成することも可能です。
顔や手を洗うごとにガラスの美しさを感じる生活って、あこがれますね。

ちなみに、教会などで見られるステンドグラスにも似ていますが、あちらが基本的にガラス同士をつなぎ合わせるのに対し、アートガラスは一枚ものです。
そのため耐久性も抜群で、モノでもぶつけない限り割れることはまずありません。
半永久的に美しいといっていいでしょう。
そのかわり、大きいものだと高さ180cm幅60cmといったサイズになるので、制作には大きな電気釜が必要になります。
こうした設備の導入は、電気代のコストまで考えると一般の工房では難しいかもしれません。
そのため、アートガラスに関しては、沖縄では恩納ガラス工房が一歩抜きん出ているようです。
3.幸せを呼ぶ琉球瑠璃ガラス
さらに宮國さんが切り開いてきた独自の世界が、琉球瑠璃ガラスというジャンルです。
瑠璃ガラスは、作品としてはシーサーが多いようです。

焼き物や漆喰のシーサーはよく見かけますが、瑠璃ガラスのシーサーはあまり見かけません。
作り方もシリコンに彫刻をほどこして、それから型を取るなど、かなり手がこんでいるそうです。
ここまでやっている工房は、少なくとも沖縄にはほとんどないのではないでしょうか。

もともと瑠璃ガラスは幸せを呼ぶといわれ、魔除けのシーサーと組み合わせれば、まさに最強のパワーストーン、もしくはパワーガラスといえるでしょう。
その比類ない美しさも相まって、一対は所有したいと思わざるを得ません。
4.めくるめく光とガラスの迷宮へ
他の琉球ガラス工房にない、ここ独自のアミューズメントといえば、光とガラスの迷宮・ゴールドラビリンスでしょう。
これは、いわばガラスでできた迷路です。


厳密にいうと「ゴールドラビリンス・ゾーン」と「ブルーラビリンス・ゾーン」のふたつに分かれており、いずれもガラスが幾重にも光を反射して、幻想的な世界を作り出します。
そのなかをゴール目指して探求していくアミューズメントですが、まるで宇宙というか、銀河空間を旅しているような不思議な感覚を覚えます。
ぜひ一度体験してみてください。

Text:吉田 直人
Photo:根原 奉也
(取材:2023年8月)
住所: 沖縄県恩納村字冨着85
電話番号: 098-965-3090
料金目安: 入場料/無料(ゴールドラビリンスを除く)
営業時間: 8:00~18:00
定休日: 年中無休
駐車場: あり
店舗詳細URL: https://onna-glass-okinawa.co.jp/