沖縄マリンレジャーセイフティビューロー/安全対策優良店(マル優)とは?認定基準と優良店の見分け方
「沖縄でダイビングやシュノーケリングをしたいけれど、たくさんあるお店の中から、どこを選べば安全なのか分からない」——これは多くの方が抱く不安です。
実は沖縄県には、利用者がこの判断をするための公的なものさしがあります。 それが「安全対策優良海域レジャー提供業者(通称:マル優)」という指定制度です。
この記事では、マル優制度の根拠となっている沖縄県の「水上安全条例」の仕組みから、マル優に指定されるための具体的な審査項目、そして実際の指定店の見分け方までを、公的資料に基づいて解説します。お店選びに迷ったときの、確かな判断材料にしてください。
1. 前提:沖縄には「マリンレジャーの安全」を守る条例がある
マル優を理解するには、まずその土台となる沖縄県水上安全条例(正式名称「沖縄県水難事故の防止及び遊泳者等の安全の確保等に関する条例」)を知る必要があります。
なぜ沖縄に独自の条例があるのか
この条例は平成5年(1993年)に制定されました。 背景には深刻な事情があります。海洋レジャーの急速な普及により、平成4年には沖縄県の水難事故が90件・死者46人に達し、人口10万人あたりの事故発生率・死者数が全国1位という状況でした。 特にダイビング事故については、全国の事故件数の3分の1、死者数の4分の1が沖縄に集中していたのです。
当時の事故には、事業者の指導員による不適切な指導が原因となっていたものが多く含まれていました。 そこで沖縄県は、事業者による総合的な事故防止対策を講じさせるため、独自の条例を制定したのです。
条例は今も更新・強化され続けている
この条例は一度作って終わりではなく、今なお内容を更新・強化されています。
水難事故が令和3年の改正後も増加傾向にあり、全国的にも高水準で推移していることから、対策の強化が続いている——これが沖縄のマリンレジャーを取り巻く現実です。
2. 大前提:事業者には「届出義務」がある
マル優の話に入る前に、もう一つ重要な前提があります。沖縄県でマリンレジャー事業を営むには、公安委員会への届出が法的に義務付けられているという点です。
水上安全条例に基づき、海水浴場、ダイビング、スノーケリング、水上オートバイ、SUP、カヌー・カヤックなどを営む事業者は、公安委員会への届出が必要です。無届け営業は罰則の対象となります。
つまり「届出業者であること」は、安全な店を選ぶための最低ラインです。 そしてこの届出業者の中で、さらに高い安全基準を満たした事業者だけが「マル優」に指定されます。
3. マル優(安全対策優良海域レジャー提供業者)とは何か
公安委員会が認定する「お墨付き」
マル優とは、水上安全条例 第23条に基づく制度です。 沖縄県公安委員会が、安全対策が公安委員会規則で定める基準に十分適合していると認めた海域レジャー提供業者を指定します。
指定された事業者には「安全対策優良標示(マル優マーク)」が交付され、見やすい場所への掲示が認められます。 逆に、基準に適合していないことが明らかになった場合は、指定が取り消されます。 一度取れば永久に続くものではなく、指定期限(通常1年)ごとに更新が必要な、実効性のある制度です。
マル優が「届出業者」より上位にある理由
整理すると、沖縄のマリンレジャー事業者には次の階層があります。
沖縄県の令和6年度報告書でも、観光客が事業者を選ぶ際の課題として「価格・レジャー内容を中心に選ばれており、安全・安心に着眼した選定方法の周知は途上段階」と指摘され、マル優事業者を「選ばれやすくなるよう見える化する」ことが今後の方針として挙げられています。 マル優は、行政自身が利用者に推奨している判断指標なのです。
4. マル優の審査項目——具体的に何が求められるのか
では、マル優に指定されるには何が必要なのでしょうか。水上安全条例 第17条が定める「潜水業者の事故防止等の措置」を中心に、求められる水準を一つずつ見ていきます。
① 有資格者(ガイドダイバー)の配置
事業所ごとに、自ら潜水し、潜水者を案内・指導する者(ガイドダイバー)を置くことが義務付けられています。 お客様を引率するのは、技能を持った専任のガイドでなければなりません。
② 器材の完備と事前の安全点検
老朽・破損などで危険が生じるおそれのある潜水具を使用させないこと、そして潜水具を使わせる前に正常に機能するか事前点検を行うことが求められます。 器材トラブルは事故に直結するため、日常的な点検体制が問われます。
③ 危険な利用者・危険な場所での潜水禁止
- 潜水者が酒に酔っている、または正常な潜水ができない状態のとき、潜水技術が未熟で安全な潜水ができないおそれがあると認められるときは、潜水させないこと。
- 危険が生じるおそれがある場所では潜水させないこと。
「お客様が希望したから」と無理にツアーを実施しない判断力も、安全管理の一部です。
④ 潜水者名簿・ガイドダイバー名簿の備え付け
公安委員会規則に基づき、潜水者の名簿およびガイドダイバーの名簿を備え、住所・氏名その他必要な事項を記載することが求められます。 誰がいつ潜ったかを記録・保存する体制は、万一の際の捜索・救助に直結します。
⑤ 事故発生時の通報・救助体制
- 水難事故が発生したことを知ったときは、直ちに最寄りの警察署等へ通報すること。
- (努力義務として)緊急連絡できる通信手段の整備、救命浮輪・ロープまたは救命ボート・ロープの備え付け、ガイドダイバーの知識・能力の向上。
ガイドと利用者の比率も定められている
令和3年の改正では、ガイドダイバーと顧客の比率の基準も明確化されました(体験潜水はガイド1人あたりおおむね2人、初級・中級でそれぞれ上限が設定)。 一人のガイドが大人数を抱え込む「目の届かない潜水」を防ぐためのルールです。
5. 実際のマル優指定店を見てみよう
マル優は抽象的な概念ではありません。沖縄県公安委員会は「安全対策優良海域レジャー提供業者(マル優業者)一覧表」を公表しており、誰でも指定店を確認できます。
ここでは、令和8年4月30日現在の潜水業マル優一覧に掲載されている実在の指定店の一部を紹介します。
たとえば マリンハウスシーサー は那覇店・阿嘉島店がともにマル優指定を受けています。 パラダイス倶楽部 は那覇・泊エリア、 アイランド倶楽部 は人気ダイビングエリアである恩納村山田で指定を受けています。
これらの店舗は、前章で見た審査項目——有資格ガイドの配置、器材点検、名簿管理、救助体制など——を公安委員会の基準に照らして満たし、人的・設備的に高い水準を維持していると認められた事業者です。
なお、マル優一覧には指定期限も記載されています。 指定は更新制なので、利用前に最新の一覧で指定が有効かを確認することをおすすめします。
6. なぜ沖楽は「マル優・正規認定店」しか掲載しないのか
ここまで読んでいただければ、沖楽の方針の理由が伝わるはずです。
沖楽のダイビング・マリンアクティビティは、沖縄マリンレジャーセイフティービューローが認定する安全対策優良店、および各ダイビング指導団体の正規店のみを掲載しています。 マル優のような客観的な安全基準を満たした事業者だけを、私たちの責任で厳選しているということです。
掲載基準を設けている以上、掲載店舗数は他のプラットフォームより少なくなります。 それでも私たちがこの方針を貫くのは、前提として沖縄ではマリンレジャーの死亡事故が現実に毎年発生しているからです。 お客様にとっては一生の思い出となる体験。その安全を、価格や品揃えと引き換えにすることはできません。
「数の多さ」ではなく「一店一店の安全性」で選ぶ。これが、沖楽が責任を持ってお届けできる、唯一の形です。
安全基準をクリアしたお店のダイビングプランは、こちらからご覧いただけます。
出典・参考資料
沖縄県公安委員会「安全対策優良海域レジャー提供業者(マル優業者)一覧表(潜水業)」(令和8年4月30日現在)
内閣府沖縄総合事務局「沖縄県における水難事故の発生状況と対策について」(令和7年4月)/沖縄県水上安全条例 第4条・第14条・第17条・第20条・第21条・第23条 ほか
第十一管区海上保安本部「マリンレジャーに伴う人身事故の現状」
オリエンタルコンサルタンツ・沖縄ライフセービング協会共同企業体「令和6年度マリンレジャー事故防止調査対策事業 報告書 概要版」(令和7年3月)
本記事は上記の公的資料に基づき作成しています。マル優の指定状況は更新制のため、最新の指定状況は沖縄県公安委員会の公表する一覧表をご確認ください。
株式会社SEEC 旅行事業部 部長(沖楽 事業責任者)/一般財団法人 沖縄マリンレジャーセイフティービューロー 理事(2021年〜)
ダイビングのアドバンス・オープン・ウォーター(AOW)ライセンス取得者。沖縄本島・離島で数百本のダイビング経験を持ち、沖縄県内の多数のダイビングショップへの取材・現地確認に同行。安全基準の観点から事業者の選定・掲載基準の策定を担当している。

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監修者コメント(松川)
「まれに『届出をしていない営業者』が観光客向けに営業しているケースがあります。届出は安全対策の出発点。ここをクリアしていない時点で、お客様の命を預ける相手としては論外だと考えています。」