沖縄ダイビング・シュノーケリングでの水難・死亡事故の実態と原因|命を守るレジャーの選び方
/株式会社SEEC旅行事業部部長(沖楽 事業責任者)/2021年より、一般財団法人 沖縄マリンレジャーセイフティービューロー 理事。 ダイビングのアドバンス・オープン・ウォーター(AOW)ライセンスを取得し、沖縄本島・離島で数百本のダイビング経験を持つ。沖縄県内の多数のダイビングショップへの取材・現地確認に同行。安全基準の観点から事業者の選定・掲載基準を策定。
沖縄のダイビングやシュノーケリングは、一生の思い出になる体験です。一方で「沖縄 ダイビング 事故」「ダイビング 危険性」と検索して、不安を抱えたままこのページにたどり着いた方もいるかもしれません。
私たち沖楽は、その不安を「大丈夫ですよ」と打ち消すのではなく、公的機関が公表している事故データを正確にお伝えすることが、結果としてあなたの安全につながると考えています。リスクを正しく知ったうえで、適切な店を選ぶ——それが沖縄の海を安全に楽しむための唯一の方法だからです。
この記事では、内閣府沖縄総合事務局や海上保安庁などが公表する公的データのみに基づいて、沖縄のマリンレジャー事故の実態と原因を解説します。
1. 沖縄のマリンレジャー事故は「過去最多」を更新している
まず知っていただきたいのは、沖縄のマリンレジャー事故は決して「めったに起きない、運の悪い事故」ではない、という事実です。
第十一管区海上保安本部のデータによると、令和6年(2024年)のマリンレジャーに伴う人身事故は109人で、令和5年より16人増加し、過去5年間で最多となりました。しかもそのうち観光客による事故が75人と、全体の約7割を占めています。観光客の事故割合は年々増加傾向にあります。
過去5年間(令和2〜6年)のマリンレジャー人身事故は累計452人にのぼります。活動内容別に見ると、
- スノーケリング中:130人(29%)
- 遊泳中:82人(18%)
- ダイビング中:76人(17%)
- 釣り中:52人(11%)
- SUP中:45人(10%)
死者・行方不明者は、スノーケリング中・ダイビング中に多く発生しています。
2. ダイビング事故の実態——「中高年・観光客・ボートエントリー」に集中
ダイビングに絞って、もう少し詳しく見ていきます。第十一管区海上保安本部の分析(平成30年〜令和4年の事案)では、ダイビング中の事故者は76人、そのうち観光客が68人と約9割を占めました。
年齢層:40歳以上が約8割
40歳以上が事故者全体の約8割。なかでも50歳代が最多の33%です。別の調査(令和6年度マリンレジャー事故防止調査対策事業報告書)でも、水難事故の死亡・行方不明者の6割以上が50歳以上とされており、中高年層は「事故に遭った場合に重症化・死亡につながりやすい」傾向が一貫して示されています。
エントリー方法:ボートエントリーが86%
事故者76人のうち、ボートエントリー時の事故が65人(86%)、ビーチエントリーが11人(14%)でした。さらに、マリンレジャー事業者を利用したボートエントリー時の事故が約9割を占めています。
つまり「事業者のツアーに参加していても事故は起きている」ということです。実際、令和6年度の報告書では、水難事故の約半数(51%)がガイド(事業者)を伴う状況での事故でした。これは「ガイドがいれば安全」という思い込みへの警鐘です。だからこそ、どんな安全管理をしている事業者なのかが決定的に重要になります。
3. なぜ事故は起きるのか——公的資料が示す3つの原因
原因① 海象(天候・風・波)の急変への対応不足
海上保安庁の分析では、ダイビングに関わる舟艇事案の約8割が、波浪注意報などが発令されている中で発生しています。事故が多いのは海が荒れやすい10月から年末年始、そして午前中です。
運輸安全委員会が公表した実際の事故事例でも、
浸水事故(石垣市沖・平成24年):強風注意報・波浪注意報の発令中、「過去の経験から早めに帰ってくれば大丈夫だろう」と判断して出航し、帰航中に波を受けて浸水(乗船者全員救助)。
転覆事故(宮古島市下地島沖・令和5年8月):船長が出航後に最新の気象・海象情報を入手しておらず、状況の変化を察知できないまま波の打ち込みにより浸水・転覆(乗船者全員救助)。
いずれも、最新の気象・海象情報の入手と、天候悪化時にダイビングを中止する明確な運航基準があれば防げた可能性が指摘されています。
原因② 船上の見張り不在
潜水業者やスノーケリング業者の中には、単独で船の操船とツアーガイドを兼ねている事業者がいます。ガイドが自ら海に潜ることで船が無人状態となり、海中で意識を失った人を船上へ引き上げられず、迅速な救護ができなかった事案が発生しています。
このため令和6年12月の有識者会議の提言では、「船上において見張り等を実施する要員を置く」ことが検討されています。逆に言えば、現時点でも見張り体制をきちんと敷いている事業者を選ぶことが、利用者側にできる重要な防御策です。
原因③ ライフジャケット未着用(特にシュノーケリング・遊泳)
ということはシュノーケリングや遊泳で特に顕著です。スノーケリング中・遊泳中の事故者212人のうち、ライフジャケット非着用者が84%。そしてガイドを伴わない死亡者の約8割がライフジャケット未着用でした。
ライフジャケットは「泳ぎに自信がない人のための道具」ではなく、意識を失っても浮力を確保し命をつなぐための装備です。報告書がこれを「海のシートベルト」と表現しているのは、まさにこの理由からです。
4. シュノーケリングも「気軽だから安全」ではない
「ダイビングは器材が必要だけど、シュノーケリングなら気軽」というイメージがあるかもしれません。しかしデータはむしろ逆を示しています。
令和6年のスノーケリング中・遊泳中の事故者は64人で、令和5年より22人増加し過去5年間で最多。観光客の事故も47人と過去最多でした。前述のとおりライフジャケット非着用率は84%にのぼり、死者・行方不明者66人のうち約7割が50歳以上です。
令和6年8月にはスノーケリングの事故が9件多発し、うち4件は宮古島で発生しました。気軽に見えるアクティビティほど、装備や監視が手薄になりやすい——この点はダイビングと共通の教訓です。
5. 「安全対策をしている店」をどう見分けるか
事故の多くは事業者の安全管理で防げるものであり、店選びが命を分ける。
では、利用者はどうやって「安全な店」を見分ければよいのでしょうか。沖縄には、それを客観的に判断するための公的な仕組みがあります。
① 沖縄県水上安全条例の「届出業者」であること
沖縄県では、ダイビングやスノーケリングなどのマリンレジャーを営む事業者に対し、公安委員会への届出を義務化しています(無届け営業は罰則の対象)。届出業者、ガイドダイバーの配置、器材の事前点検、緊急通報体制などの安全措置が条例で求められています。
② 「安全対策優良海域レジャー業者(マル優)」であること
届出業者の中でも、安全対策が公安委員会規則の基準に十分適合していると認められた事業者は、「安全対策優良海域レジャー提供業者(通称マル優事業者)」として指定されます。これは沖縄県公安委員会による第三者認定であり、利用者が安全性を判断するうえで信頼できる客観的な指標です。
③ 指導団体の正規店であること
PADIやNAUI、BSACといったダイビング指導団体の正規店であることも、適切な講習・運営体制の一つの裏付けになります。
残念ながら、レジャー事業者の中には、万が一の事故のときの保険も未加入の事業者が少なからず存在します。上述の「マル優事業者」や「各指導団体の正規店」で保険未加入はありえません。当然ですが、必ず保険加入をチェックするためです。
見栄えの良いレジャー事業者のホームページで、または大手の予約サイトでも保険加入している店舗か、それとも未加入なのか見極めることはとても困難です。
6. 沖楽が「数より安心」を選ぶ理由
沖縄県の令和6年度報告書には、観光客が事業者を選ぶ際の課題がはっきりと書かれています。
「現状、観光客がマリンレジャー事業者を選ぶ際には価格、レジャー内容を中心に選ばれている状況であり、安全・安心に着眼した選定方法の周知は途上段階」
私たち沖楽は、この課題に正面から向き合っています。沖楽のダイビング・マリンアクティビティは、沖縄マリンレジャーセイフティービューローが認定する安全対策優良店、および各ダイビング指導団体の正規店のみを掲載しています。
掲載基準を設けている以上、掲載できる店舗数は限られます。実際、掲載基準を持たない大手プラットフォームと比べれば、私たちの掲載数は決して多くありません。それでも私たちは、「安心して楽しめる店舗だけをご紹介する」という掲載方針を2013年のサービス開始時から貫いています。
数の多さではなく、一店一店の安全性で選ぶ。それが、沖縄旅行を「一生の素敵な思い出」にしていただくための、私たちの答えです。
安全への取り組みを確認したうえで、安心して沖縄の海を楽しんでください。
出典・参考資料
内閣府沖縄総合事務局「沖縄県における水難事故の発生状況と対策について」(令和7年4月)
第十一管区海上保安本部「マリンレジャーに伴う人身事故の現状」「ダイビングに係る事案の発生傾向」
国土交通省 運輸安全委員会「ダイビング船の安全運航について」
オリエンタルコンサルタンツ・沖縄ライフセービング協会共同企業体「令和6年度マリンレジャー事故防止調査対策事業 報告書 概要版」(令和7年3月)
沖縄県水上安全条例(潜水業者の事故防止等の措置/安全対策優良海域レジャー業者の指定 ほか)
本記事は上記の公的資料に基づき作成しています。統計値は集計期間・出典機関により範囲が異なる場合があります。最新の情報は各機関の公表資料をご確認ください。



監修者コメント(松川)「事故の原因をたどると、特別な不運ではなく『気象判断』『見張り』『装備』という、事業者の安全管理で防げるものがほとんどです。お客様自身がすべてを判断するのは難しい。だからこそ、これらを徹底している事業者を選べるかどうかが、大事なポイントです。」