【ひめゆり平和祈念資料館】沖縄戦の実相と平和への願いを伝える場所
沖縄戦の実相を学び、平和への願いを未来へつなぐ。

沖縄の眩い太陽の下、青い空と豊かな緑に囲まれた糸満市に、ひめゆり平和祈念資料館は静かに佇んでいます。那覇空港から車で約35分とアクセスも良く、沖縄の歴史と平和について深く学ぶことのできる貴重な場所です。

新たな学びの場:2021年4月リニューアルオープン!
2021年4月、ひめゆり平和祈念資料館は展示内容を一新し、リニューアルオープンいたしました。過去に訪れたことのある方も、新たな展示や資料を通じて、より深く、多角的な視点から戦争の真実と平和の尊さを学ぶことができます。

普段は撮影が禁止されている資料館内部ですが、今回は特別に許可をいただき、その一部を映像でご紹介いたします。写真や資料の細部に込められたメッセージを感じ取っていただければ幸いです。
ひめゆり学徒隊の悲劇と、その奥にあった日常

ひめゆり学徒隊とは、1945年3月末、沖縄陸軍病院に看護要員として動員された沖縄師範学校女子部と沖縄県立第一高等女学校の生徒222名と引率教師18名のことです。


資料館の展示は、戦争中の彼女たちの日常から始まります。1944年3月、沖縄戦が始まるわずか1年前に撮影された修了式の日の集合写真には、笑顔と希望に満ちた生徒たちの姿があります。寮生活では、上級生が下級生にアイロンのかけ方、布団のたたみ方、お茶の淹れ方といった生活の知恵を教え、まるで家族のような温かい絆を育んでいました。


当時の学校は、現在の那覇市安里にあり、戦前の沖縄の穏やかな風景や、那覇を走る軽便鉄道(ケービン)といった当時の文化と生活様式も紹介されています。現在の国道330号線が「ひめゆり通り」と呼ばれているのは、この学校の愛称に由来するものです。教師のあだ名も展示されており、当時の学校生活がいかに活気に満ちていたかが伺えます。

しかし、その裏では、太平洋戦争や中国との戦争がすでに始まっており、日本は戦場ではありませんでしたが、海外では戦争が続いていました。軍国主義教育が学校にも導入され、戦争に勝つための国づくりを進める中で、生徒たちは軍国少女として育っていったのです。御真影への拝礼の様子も展示され、当時の思想が学校教育に深く浸透していたことが分かります。

戦時下の学校生活は一変しました。生徒たちは、スカートの制服からもんぺ(農作業用の丈夫なズボン)の着用を強制され、勤労奉仕作業や防空訓練などを行うようになります。

戦争を勝ち抜く心身をつくり、戦争に向かう気分を高める目的で、夜中に出発し、嘉手納や勝連といった遠方まで往復68kmもの道のりを歩く十七里行軍も行われました。作業の内容も、日本軍の陣地構築など、戦争に直接関わる内容になりました。
戦場の現実:壕での看護活動と筆舌に尽くしがたい過酷な日々

1945年3月23日、米軍が沖縄本島に上陸し、沖縄戦が始まりました。ひめゆり学徒隊は沖縄陸軍病院に動員され、壕での医療活動に従事します。当時の生徒たちの想像を遥かに超える悲惨な状況が待っていました。

壕での医療活動は、まさに極限状態でした。南風原の小高い丘に、40近い壕が掘られていて、そこには負傷兵がひしめき合っていました。生徒たちは、慣れない看護活動、睡眠不足、食料不足、物資不足といった過酷な状況下で、医療の補助を行いました。

麻酔が不十分な中での手術や、負傷兵の遺体処理といった筆舌に尽くしがたい作業も担いました。
鎮魂:未来へと語り継がれる命

ひめゆりの塔は、学徒隊の最後の地である伊原第三外科壕の上に建てられた慰霊碑です。1945年6月19日朝、米軍の攻撃により、多くの生徒や教師が亡くなりました。

敷地内には、戦争翌年の1946年4月5日に建立された最初の「ひめゆりの塔」も残されています。

鎮魂の空間には、沖縄戦で亡くなった227人の生徒と教師一人ひとりの写真と名前が壁に掛けられています。これらは彼女たちが確かに生きた証であり、後世へと語り継ぐべき貴重な資料です。

資料館自体が、亡くなった方々への供養の取り組みでもあります。生徒たちが自らの手で資料を集め、展示を企画し、後世へと伝える活動を続けています。
戦争が終わり、米軍の収容所に入れられた生徒たちもいました。家族や友人との再会は喜びである一方で、仲間を失った悲しみや、生き残ってしまったことへの罪悪感に苦しむ日々でもありました。しかし、その中で彼女たちは、平和への強い願いを抱き、多くの生徒が小学校の教師となり、平和教育に尽力しました。また、絵やアニメ、証言という形で体験を表現し、若い世代に戦争の悲惨さを語り継ぐ活動も行いました。
平和への願いを胸に、沖縄の歴史を学ぶ旅へ

ひめゆり平和祈念資料館は、単なる資料館ではなく、平和を願い、未来へとつなぐための尊い場所です。戦争の悲惨さと平和の尊さを学び、未来へつなぐことの重要性を肌で感じてください。

リニューアルされた展示では、当時の日常や風景をより詳細に知ることができます。さらに、音声ガイド(日本語・英語・中国語・韓国語・スペイン語)もございますので、各展示エリアでより深い理解を深めることができます。

ぜひ、実際に足を運び、耳と目で沖縄の歴史を感じ、平和について深く考えてみてください。皆様のご来館を心よりお待ちしております。
取材協力
名称:ひめゆり平和祈念資料館
住所:沖縄県糸満市伊原671-1
電話:098-997-2100
HP:https://www.himeyuri.or.jp/
