2022年06月02日
北谷長老酒造工場株式会社|嘉永元年(1848年)創業の歴史と伝統を背景にぶれない泡盛づくり
沖縄本島中部の北谷町(ちゃたんちょう)で、地元の人に愛される泡盛をつくる蔵元「北谷長老酒造工場株式会社」。
少人数ゆえの限られた量を、伝統的な製法を守った丁寧な酒づくりで生産しています。
黒糖のような甘さが女性に人気の「北谷長老」と、フルーティな香りと鋭いキレが特徴の「一本松」はこちらの二代巨頭。
泡盛初心者の人も、飲み慣れた人も一度は試してほしい名酒です。
ふたつの意外な結びつきも好奇心をそそりますよ。
1.代々受け継がれてきた製法でつくるこだわりの泡盛
嘉永元年1848年、北谷長老酒造工場株式会社はもともと玉那覇(たまなは)酒造所として那覇市首里で創業されました。
1910年に北谷町桑江(くわえ)へ移転しましたが、戦後、米軍用地となったため、1940年代に現在の場所で営業を再開しています。
現当主は5代目の玉那覇徹さん。
残念ながら戦火で昔の資料はほとんど残っていないそうですが、戦時中、先代が泡盛づくりの命でもある黒麹を持って生き延び、その麹をもとに酒造所を一から始めたというエピソードが伝えられています。
原料米から泡盛のベースとなる“もろみ”の仕込みはもちろん、瓶のラベル貼りまで全て少人数の手作業で行うため、生産量は限られています。
いつも変わらぬおいしさと品質を守るためにも今のやり方がベストなのだそうです。
北谷長老酒造工場株式会社が何より大切にしているのは、伝統的な製法を守ること、そしてそれを後世に伝えていくこと。
工場長の知念秀人さん(写真左から2番目)は「ずっと同じ味を完璧につくり続けることはできないかもしれませんが、その完璧を目指して努力し続けることはできると思います」と謙虚な姿勢で真摯に酒づくりと向き合います。
2.名酒「北谷長老」と「一本松」の知られざる繋がりを知る
社名にもなっている北谷長老シリーズは、黒糖のような甘さが感じられる不思議な泡盛。
もしかしたらそれが黒麹の力なのかもしれません。
写真左から30度、25度、43度。
一番人気の25度(720ml)は13年熟成された古酒のため角がとれた、まろやかな味わいが特徴です。
一般的に泡盛は30度くらいが主流ですが、25度なら初心者の人も手を出しやすく、こんなに飲みやすい泡盛があるのかときっと驚くはず。
ちなみに“北谷長老”とは昔、貧しい人に食べ物を分け与えたり、ケガや病気の人がいたら薬をあげたりしていたという、北谷に実在した僧侶の呼び名が由来です。
北谷長老シリーズのミニサイズ(180ml)飲み比べ3本セットはお土産にもおすすめ。
「泡盛ツウの人は『ロックが一番』と言うかもしれませんが、若者の泡盛離れが進む中、私はレモンを絞ったり、炭酸で割ったり、いろいろな方法で好きなように飲んでほしいと思っています。それが北谷長老を知るきっかけになればうれしいです」と知念さん。
もうひとつの代表的な銘柄「一本松」(720ml)は、北谷町が舞台になった沖縄芝居「丘の一本松」にちなんだ名酒。
芳醇な香りとキレのある喉ごしで泡盛本来の味わいが楽しめます。
「北谷長老」のネームバリューが強いため、その陰に隠れてしまうことも多いのですが、従業員の皆さんもこぞって購入するというこちら。
それもそのはず、実は「一本松」が3年以上熟成されて「北谷長老」になります。
いわば出世泡盛!おいしくないはずがありません。
「一本松」が時を経てどのような味わいになるのか、飲み比べてみてくださいね。
通常より少しリーズナブルな価格で購入できる併設の販売店もおすすめです。
知念さんは「うちの泡盛を飲んだ人から『おいしいよね』ってうれしい言葉をかけてもらうことがあります。でもそれは私たちがつくった泡盛かどうかはわかりません。もしかしたら、ずっと前に先輩たちがつくった酒が熟成されて、先輩の引退後に飲んだ人が私に言ってくれたということもありえます。それって凄いことだと思うんです」と話してくれました。
沖縄の泡盛の歴史に欠かせない北谷長老酒造工場株式会社。
代々受け継がれてきた由緒ある味をその舌で確かめてみませんか?
Photo&Text:金城絵里子
(取材:2022年4月)
北谷長老酒造工場株式会社
- 住所
- 沖縄県中頭郡北谷町吉原63
- 電話番号
- 098-936-1239
- 営業時間
- 9時〜18時
- 定休日
- 土曜日/日曜日/GW/旧盆/年末年始
- 駐車場
- あり
- その他
- 工場見学はしておりません