那覇空港から車で約2時間半。
沖縄県北部の「やんばる」と呼ばれる山深い場所に広がる「大宜味村(おおぎみそん)」は、昔から長寿の村と言われています。
その理由は、大宜味村の人々が昔から育ててきた栄養豊富な島野菜にあるようです。
そんな大宜味村の食に対する昔ながらの工夫や知恵を、今に伝えてくれているのが「笑味の店」。
店主の金城笑子さんが作る滋味あふれる料理を求め、観光シーズンに関係なく、年間を通して県内外から多くの人が訪れ、沖縄の食の奥深さに魅せられています。
1.無農薬、無化学肥料で育て上げる島野菜
笑味の店がオープンしたのは1990年。
店主の金城恵美子さんは、大宜味のおばぁたちが営む島野菜を中心とした自給自足の生活を、幼い頃から見て育ちました。
その日使う分だけ収穫するから無駄がなく、旬の野菜だから栄養価は高く、鮮度抜群。
そのうえ毎日畑仕事をするから運動にもなり、体にもよい。
まさに今しきりに叫ばれている「フードロス」や「スローライフ」が自然と実践されていたわけです。
環境にも体にも優しいその生活や知恵を、多くの人に伝えたい。
また元々栄養士でもあった金城さんは、伝統的な島野菜を工夫して、多くの人に食べてもらいたいとも考えました。
それを実践するための拠点として、自宅を少しずつ改装し「笑味の店」を完成させたのです。
金城さんもやはり、大宜味のおばぁたちのように自家菜園を持っています。
そこで育てる野菜は、玉ねぎやにんじんなどの一般的なものはもちろん、ハンダマ(スイゼンジナ)やフーチバー(ヨモギ)など沖縄ならではの島野菜まであり、その種類は金城さん曰く「数え切れないほど」とのこと。
店の料理に必要な野菜を、ほとんど自家菜園でまかなっているというから驚きです。
農薬は使わず、化学肥料も不使用。
安心・安全なうえ、季節ごとの野菜しか使わないから、おいしくて、栄養満点の料理が作られるのです。
2.品数豊富、栄養満点の「まかちくみそーれ」ランチ
金城さんの育てる野菜のおいしさや、多彩な料理の技術を堪能するなら、沖縄の方言で「任せて!」という意味を持つ「まかちくみそーれランチ」がおすすめです。
使われている食材の数は、金城さん曰くやはり「数え切れないほど」とのこと。
おにぎりや汁物におかずなど、品数は合わせて約12種類。
どの料理も鮮やかで美しいですが、全て自然の色。食材の豊かさに驚かされます。
和え物や煮物に炒め物など、長寿の村・大宜味村で受け継がれてきた調理法で作られた料理は、食感も味もそれぞれ異なり、美味しくも楽しいものばかり。
量が多いように感じられますがほとんどが野菜でできているため、胃もたれすることなく最後までいただけます。
3.お土産にぴったりの加工食品
食への探求心がとどまることを知らない金城さん、オリジナルの加工食品開発にも余念がありません。
こちらは、シークヮーサー果汁やウコン、にんにく、りんごなどをブレンドした万能調味の「笑味たれ」と、大宜味産シークヮーサー100%使用したポン酢。
どちらもたっぷり入っているので、自宅用のお土産におすすめです。
ちょうど取材日にパッケージが完成したというカラキ茶。
カラキとはシナモンの仲間で、大宜味村のあるやんばる地方に自生しており、昔からお茶として飲まれてきました。
シナモンに似た豊かな香りが印象的な、ホットにもアイスにも適したお茶です。
大宜味村は、高速道路を使っても那覇から2時間以上と、決してアクセスのよい場所ではありません。
しかし人里離れた場所だからこそ、大切な何かがずっと残されているような気がしてなりません。
「笑味の店」は、大宜味のおばあたちに育くまれた大切なもの、つまり本当に豊かな暮らしを、私たちに伝えてくれているようです。
text:仲濱 淳
Photo:白木 裕紀子
(取材:2021年1月)
住所: 沖縄県国頭郡大宜味村大兼久61
電話番号: 0980-44-3220
営業時間: 9:00~17:00(食事は11:30~/L.O.16:00)
定休日: 火曜日~木曜日
駐車場: あり
店舗詳細URL: https://eminomise.com/